3章・星の揺らぎ

「私達の村‥‥燃えちゃったはず‥‥だよね?」
 ティファは自分が今見ているものが信じられなかった。
「そのはずだ‥‥」
「それなのにどうして?何もかも昔のままよ。」
 ティファの問いに、クラウドは答えようがなかった。
「村人が再建したんじゃねえのか?」
 バレットは至極単純に言った。
「生き残った村人は何人もいなかった。村の再建なんて出来る訳がない。それに、これは再建なんてものじゃない。昔とまったく同じ姿に復元されている。」
「クラウド、夢でも見てたんじゃないの〜?」
 ユフィはからかうように言った。
「俺は嘘なんか言ってない!あの時の炎の熱さ、人々の悲鳴を俺ははっきり覚えている‥‥」
「ここでいろいろ言ってても仕方ないし、とにかく中へ入ってみようよ。」
 エアリスに促され、クラウド達は村に足を踏み入れた。
 キィキィという音を聞いて、クラウドは宿屋の屋根を見上げた。屋根に取り付けられた風見鶏が、風に回っていた。
「どうした、クラウド?」
 バレットは声をかけた。
「なんでもない。とりあえず、宿屋に入ってみよう。」
 クラウド達は宿屋の中に入った。
「いらっしゃい。お泊まりですか?」
 中年の男が愛想良く言った。
「聞きたいことがある。この村は5年前に何もかも燃えてしまったはずだ。一体これはどういうことだ?」
 笑みを浮かべていた男の顔が、一瞬警戒する目つきになったのをクラウドは見逃さなかった。
「何をおかしなこと言ってるんですよ、お客さん。私はここで生まれ育った人間です。村が燃えたなんて、そんなこと一度もありませんでしたよ。」
 男はバカな冗談を聞いたとばかりに、愉快そうに笑った。
「あなた嘘を言ってるわ。それにこの宿屋はずっと昔から、白髪頭のおじいさんがやっていたのよ。あなたなんて見たこともないわ。」
 ティファは男に詰め寄った。
「失礼なことを言う人達だなあ。妙ないいがかりをつけないで下さい。出て行ってもらいますよ。」
 険悪な雰囲気で睨み合うティファと男の間に、ケット・シーが割って入った。
「あははは、いやあ、すんまへんすんまへん。こっちの勘違いでしたわ。別の村とごっちゃになってましたんや。気にせんといて下さい。ほな、失礼しました〜。」
 ケット・シーに押し出されるようにして、クラウド達は外に出た。
 宿屋の隣の雑貨屋にも入ってみたが、そこにいた人々もやはりクラウドやティファの知らない者ばかりだった。彼らもまた、村が燃えたことなどないの一点張りだった。
「やっぱりこの村、怪しすぎだね。みんな何か隠してる。」
 エアリスは探偵よろしく、腕を組んで考え込んだ。
 その時、後ろから歩いて来た人物にドンとぶつかった。
「あ、ごめんなさい‥‥」
 エアリスがぶつかったのは、黒のフード、黒のマントをはおった全身黒づくめの男だった。男はよろよろと膝をついた。
「‥‥う‥‥ああ‥‥」
 男は呻いた。
「あの、だいじょぶですか?ご病気ですか?」
「‥‥フィロス様‥‥待って‥‥る‥‥」
「え?今なんて‥‥」
「‥‥リ‥‥ユニオン‥‥」
 男は手を貸そうとするエアリスを、弱々しい力で振り切って歩いて行った。
「どしたの、エアリス?今の奴、なんか薄気味悪い奴だったね。」
 ユフィは言った。
「ねえ、オイラ今気付いたんだけど、よく見ると同じような黒マント姿の人が村のあちこちにいるよ。」
 レッドXIIIの言う通り、ざっと見渡しただけでも、4、5人の黒マントの男が村の中をさまよい歩いていた。
「何あれ?今年の流行?」
 ユフィはふざけて言ったが、そのユフィの後ろをまた別の黒マントの男が通り過ぎて行った。男が通り過ぎざまに呟いた言葉を聞いて、ユフィは男の腕をバッとつかんだ。
「ちょっとアンタ!今『黒マテリア』って言った!?」
「‥‥黒マテリア‥‥をセフィロス様‥‥のもと‥‥へ‥‥」
「黒マテリアってなんなのさ!?このマテリアハンターユフィでさえ知らない黒マテリアって一体――」
 ユフィは男の襟首を締め上げたが、男のよどんだ生気のない目に見返され、思わずその手を離した。
「気味ワル〜‥‥なんなんだよ、アイツ。おまけに手の甲に8の入れ墨なんかしちゃって、変な奴。」
「手の入れ墨?そういえば、さっきの人も数字の2の入れ墨してたよ。」
 エアリスは言った。
 他の黒マントの男達も調べてみると、全員が手の甲にそれぞれ違う番号の入れ墨をしていた。さらに共通してうわごとのように、セフィロスの名前や黒マテリア、そしてリユニオンの言葉を繰り返している。
「この人達‥‥一体なんなの?」
 ティファは全員の気持ちを代弁して言った。
「‥‥神羅屋敷に行ってみよう。あの場所は5年前の火事で唯一焼け残ったものだ。きっとまだ建物が残っている。それに、あそこでセフィロスはおかしくなったんだ。何か手がかりがつかめるかもしれない。」
 クラウドの予想通り、神羅屋敷はまだそこにあった。屋敷の周りにも黒マントの男達がウロウロしていた。
「‥‥どこ‥‥ですか、セフィロス‥‥様‥‥」
「‥‥リユニオン‥‥行き‥‥たい‥‥」
 男達の呟きを聞きながら、クラウド達は表玄関を蹴破るようにして神羅屋敷へと入った。
 中に入ると、埃臭さとカビ臭さが鼻をついた。長い間、人の出入りがなかったことが伺える。
 クラウドは地下室への秘密の入り口に直行した。
「まるでお化け屋敷、ね。」
 エアリスが言うと、ユフィはこくこくと頷いた。何か出そうだと怖がっているらしく、屋敷に入ってからというものエアリスの腕にしがみつきっぱなしである。
「ねえ‥‥ここ、なんなの?」
「昔、神羅の人達が使ってたお屋敷なんだって。別に怖がるところじゃないよ、ユフィ。」
「神羅が?神羅‥‥と来ればマテリア!もしかしたら、マテリアがどーっさり置いてあるかもしんないね!よしっ!行こ!早く行こ!」
 途端に元気になり、ユフィは二段飛びで地下室へ続く階段を飛び降りて行った。
 クラウド達は地下道を抜けて、一番奥にあるドアの前で来た。ドアノブに手をかけたクラウドは、そのまま銅像のように固まった。
「どうした?中に入らねえのか?」
 バレットは言った。
「‥‥いる。」
「何が?」
「セフィロスがこの奥に‥‥」
「ホントか!?なんでそんなことが分かるんだよ!」
 クラウド自身にもその理由は分からなかった。しかし、確かにドアの向こうに、セフィロスの存在を感じていた。
 クラウドはドアを開けた。
 長い銀髪を翻すようにして、セフィロスが振り返った。
「セフィロス‥‥」
「本当にいやがった!」
 バレット他、全員が身構えた。
 セフィロスはクラウド達が現れたことに驚いた様子もなく、こちらに向かって歩いて来た。
「懐かしいな、ここは。お前もそう思うだろう?」
 友人と世間話でも交わすような気安さで言った。
「ああ。忘れようとしても、忘れられない場所だ。セフィロス、こんなところで何をしているんだ?」
 クラウドはいつでも剣が抜けるように、柄に手をやった。
「それはこっちのセリフだな。お前こそこんなところで何をしている?お前はリユニオンには参加しないのか?」
「リユニオン‥‥そんなもの、俺は知らない。それがなんだと言うんだ?」
「ジェノバはリユニオンするものだ。ジェノバはリユニオンして、空から来た厄災となる。」
「空から来た厄災?ある人から聞いたんだが、ジェノバが古代種ではないというのは本当なのか?」
「‥‥なるほど。お前にはリユニオンに参加する資格はなさそうだな。」
 セフィロスは失望したように首を振った。
「私はこれからニブル山を越えて、古代種の神殿を目指す。クラウド、お前が自覚するならば‥‥私を追ってくるがいい。待っている‥‥」
 セフィロスはクラウド達に背を向けると、いつもと同じように煙のように消え去った。
「‥‥リユニオン。ジェノバはリユニオンする‥‥」
 クラウドはセフィロスの言葉を繰り返した。その言葉には重要な意味がある。そんな感覚を覚えるのだが、それが何かは分からなかった。
 クラウドは激しい頭痛を感じた。
「どうしたの、クラウド?顔色が悪いわよ?」
 ティファは心配そうに顔をのぞき込んだ。
「屋敷の中にベッドのある部屋があるんでしょ?そこで少し横になったら?」
「そうしろよ、クラウド。今夜はこの屋敷で休んで行くとしようぜ。俺もなんだか疲れた。」
 バレットは手近にあったデスクチェアに、ドスンと座り込んだ。ティファに付き添われ、クラウドは部屋から出て行った。
「しかし、陰気くさい場所だな。神羅の奴らはこんなところで何をしてたんだ?見たところ、何かの研究をしていたのは間違いなさそうだけどな。」
 バレットはデスクの上に無造作に放り出された書類を手に取り、パラパラと眺めた。難解な数式や化学式の羅列で、内容はさっぱり分からなかった。
 部屋の中をブラブラと見て歩いているうちに、エアリスは部屋の奥に別のドアがあるのを見つけた。隣にも部屋があるらしい。
 エアリスはそのドアを開けて中に入った。そこはガラス張りのサンプルポッドが並ぶ部屋だった。エアリスやレッドXIIIが神羅につかまっていた時に、入れられていたものと同じ型のポッドである。
「あ〜あ、イヤなものを見ちゃったな。ついでに宝条の顔まで思い出しちゃったよ。」
 いつの間にか隣に来ていたレッドXIIIが言った。エアリスはまったくだ、とばかりに頷いた。
「私達にとって屈辱的よね。このガラスポッド。全部叩き壊しちゃおうか。」
「いいね、それ。オイラも手伝うよ。」
 レッドXIIIはニヤッと笑った。
 しかし、実際にはそんな無駄な体力を使うことはせず、部屋の中をぐるりと見て回っただけだった。
 部屋から出ようとした時、エアリスは積み上げられた書類の中に気になるタイトルの書類を見つけた。
「逃亡者に関する報告書‥‥?」
 エアリスはその報告書を、書類の山の中から引っぱり出した。
「なんやおもろいもんでもありましたんか、エアリスさん。」
 ケット・シーがやって来て、いつもののんきな口調で訊いた。
「2人とも、これ聞いて。『当施設から逃亡した(A)元ソルジャー、ナンバー無しと、(B)一般、ナンバー無し、の2名をミッドガル近辺で発見。2名の発見時の状況は、(A)魔晄照射、及びジェノバの影響無し。(B)ジェノバへの反応過多あり。処分については、(A)抵抗したため、射殺。(B)(A)が抵抗する間に逃亡。現在にいたるまで(B)の行方は不明。しかし、(B)は意識の混乱が激しいため、このまま放置しておいても問題はない様子。』‥‥」
「なんのことだい、それって?」
 レッドXIIIは首を傾げた。
「分からないけど、ちょっと気になるな‥‥」
 エアリスは心の中に、何かもやもやしたものを感じた。
「ぎゃ〜っ!うわわわわわ〜っ!!」
 突然、部屋の外からユフィの悲鳴がした。
 エアリス達は部屋を飛び出した。ユフィの悲鳴は、セフィロスが現れた部屋の隣の部屋から聞こえたものだった。
「どうした、ユフィ!またセフィロスが現れたのか!?」
 バレットは銃を構えて部屋に飛び込んだ。その部屋は棺だらけの部屋だった。
「で、出た‥‥お、お化けだ、ゾンビだ、リビングデッドだ〜っ!」
 ユフィはへなへなと腰砕けの様子で、エアリスに抱きついた。
「何があったの、ユフィ。しっかりして!」
「ア、アタシ、マテリアを探してこの地下にある部屋を片っ端から調べてたんだよ。最後のこの部屋に入ったら、見ての通りの棺だらけの部屋でさ。気持ち悪かったんだけど、これも究極のマテリアのためと思って、一応全部の棺を覗いて見たんだ。どれもこれも空っぽだったのはいいんだけど、一番奥の棺に近付いたら‥‥ガタガタッて動いたんだよ、本当だよ!なんか呻き声みたいなものも聞こえたんだから!」
 エアリス達は顔を見合わせた。
「ネズミかなんかがいたんじゃねえのか?怖い怖いと思ってるから、見間違えたんだろうよ。」
 バレットは小バカにしたように鼻で笑った。
「そんなに言うなら確かめなよ!あの棺の中を覗いて見ろってんだ!」
 ユフィは奥の棺を指さした。
「チッ、しょうがねえな。棺の蓋を開けてやるからしっかり見とけ。」
 バレットはユフィが指し示した棺に近付いた。蓋に手をかけようとした瞬間、スザッと後ずさりした。
「こ、声がしたぞ。呻いてるみたいな声が‥‥」
「やっぱりー!」
 ユフィは耳を塞いでしゃがみ込んだ。
「ホントにユーレイなの?」
 エアリスは臆した様子もなく、棺の側に近寄ると耳をすました。
「呻き声っていうより、なんたがうなされてるみたいな声だね。開けてみよう、バレット。」
「エアリス‥‥あんたってホント怖いもの知らずだよな。」
 バレットは半ば感心半ば呆れたようにエアリスを見た。そして、意を決して問題の棺の蓋を開けた。
 棺の中には一人の男が横たわっていた。20代後半くらいの長い黒髪の男性だった。一瞬女性かと見間違ってしまうような、華奢な感じの線の細い青年である。
「死んでる‥‥ような感じじゃねえな。眠ってるだけみたいだぜ。」
「棺の中で寝てるなんて、けったいな人やな〜。」
 ケット・シーは不思議そうに首を傾げた。
「何かあったのか?」
 振り返ると、ドアのところにクラウドとティファが立っていた。
「悲鳴が聞こえたから、降りて来たんだけど、どうかしたの?」
「棺の中で眠ってる男の人を見つけたんだ。」
 レッドXIIIは言った。
 珍獣でも眺めるように、クラウド達が棺の中の男をのぞき込んでいると、突然、男が目を覚ました。
 男は起き上がると、自分の周りに集まったクラウド達を見回した。
「‥‥なんだ、お前達は?」
「私、エアリス。ずいぶんうなされてたみたいだけど、だいじょぶ?」
「用がないのなら出て行ってくれ。私を眠らせてくれ。」
 男はは不機嫌そうな声で言った。
「こんなところで眠ってるあなたって、一体誰なの?ものすごく怪しいんだけど。」
「‥‥私はヴィンセント。元神羅製作所総務部調査課、通称タークスのヴィンセント・ヴァレンタインだ。」
「タークス!?」
 クラウド達は驚いた。
「元タークスだ。今は神羅とはなんの関係もない。君達こそこんなところで何をしている?神羅の人間じゃないのか?」
「俺は元ソルジャーのクラウド。ある男を追ってここまでやって来た。セフィロスという奴だ。」
「セフィロス‥‥」
 ヴィンセントと名乗った男の目が、一瞬何かに思いを馳せるように細くなった。
「‥‥君が元神羅の人間なら、ルクレツィアという女性を知っているか?」
「いや、知らないな。誰なんだ?」
「ルクレツィアは‥‥セフィロスを産んだ女性だ。」
 男の口から思いもかけない言葉が飛び出した。
「産んだだって?セフィロスの母親はジェノバじゃないのか?」
「それは間違いではないが、正確でもない。一つのたとえなのだ。実際には一人の美しい女性から産まれた。ジェノバ・プロジェクトの責任者、ガスト博士の助手。科学のためにその身を捧げた女性。美しい‥‥ルクレツィア。」
 ヴィンセントはその名前を、特別な感情を込めて呟いた。
「もしかして、人体実験か何かなの?」
 エアリスは訊いた。
「‥‥あの実験を中止させることが出来なかった。彼女に思いとどまらせることが出来なかった。それが私の犯した罪‥‥。愛する‥‥いや、尊敬する女性が不幸な目に遭うのを、黙って見過ごしてしまった‥‥。だから、眠らせてくれ。」
「そうやって眠ることが、あなたの償いなの?」
「長き悪夢にさいなまれる眠り。これこそが私が自身に課した罰‥‥。眠らせてくれ‥‥」
 ヴィンセントは再び棺の中に横たわった。
「本人が眠りたいって言ってんだから、好きなようにさせればいいんじゃねえか?行こうぜ、みんな。」
 バレットは棺の中で眠るような変人と関わり合いになりたくないとばかりに、さっさと部屋の出口へ向かった。他の仲間達も、腑に落ちない様子ながらそのあとに続いた。
「ヴィンセント。セフィロスを産んだというその女性は今はどうしているんだ?」
 クラウドはその場を動かなかった。
「‥‥彼女は消えてしまった。行方など私が知るはずもない。」
「まだ生きているのか?」
「ああ。彼女はどこかで生きている。それは絶対だ。なぜなら‥‥もういいだろう。話はこれで終わりだ。出て行ってくれないか。」
 部屋を出ようとしていたエアリスが、くるりと向きを変え、またヴィンセントの元へ戻って来た。
「ね、ルクレツィアさんて人がまだ生きてるなら、どうして探さないの?その人に謝りたいことがあるなら、こんなところで眠ってる場合じゃないでしょ?」
「‥‥彼女を探し出し会ったところで、私に何が出来る?」
「そんなこと、私に分かる訳ないよ。でも少なくとも、こんな棺の中で眠って自己満足な償いをしてるよりマシなこと、あると思うけど?」
 エアリスの言葉に、ヴィンセントは閉じかけた目をまた開いた。彼女の言葉は彼の心を揺さぶった。
 ヴィンセントはやがてフッとおかしそうに笑った。
「自己満足な償いか‥‥。確かにそうだな。自分でもそれは分かっているつもりだったが‥‥」
 起き上がり、棺の中から出た。
「お前達はセフィロスを追っていると言ったな。」
「ああ、そうだ。」
 クラウドは頷いた。
「ではお前達について行けば、宝条やルクレツィアに会えるかもしれない。」
「あるいはな。」
「分かった。私もお前達と共に行くことにする。元タークスということで、何か力になれることもあるだろう。」
「おいおい本気かよ、あんた。」
 バレットは目を丸くしている。
「よし、いいだろう。一緒に行こう。」
 クラウドは異議はないか、仲間達を振り返った。エアリスは満足そうな笑みを浮かべて、オーケーサインを出している。
「セフィロスはニブル山を越えて古代種の神殿を目指すと言っていた。俺達も行くぞ。古代種の神殿へ。」
「でもさクラウド、古代種の神殿なんて場所、聞いたことないよ?どこにあるの?」
 レッドXIIIは言った。
「それは‥‥。エアリス、何か知らないか?」
「私もそんなものがあるなんて、初めて聞いた。」
 エアリスにもまったく心当たりがなかった。
「そうか。とにかく行くしかないな。ニブル山を越えて、その先は足で探すしかなさそうだ。」
 仲間達はクラウドの言葉に頷き、棺の部屋を出て行った。
「クラウド、もう具合は大丈夫なの?」
 ティファはそっとクラウドの額に手を当てた。
「ああ。もう平気だ、ティファ。」
「あまり‥‥無理しないでね。」
「俺は大丈夫だよ。」
 クラウドはティファを安心させるように笑って部屋を出た。
「クラウド‥‥」
 一人、棺の部屋に残ったティファは、寒そうに両手で自分の体を抱きしめた。




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