『空の上の新年会２００８』




「５秒前！４、３、２、１！ハッピーニューイヤー！！」
　パパパパーンッと立て続けにクラッカーが鳴り響き、紙吹雪が宙に舞った。
　簡易テーブルの上には所狭しと料理やボトルが並び、万国旗や色とりどりのオーナメントで飾り付けられたハイウインドのブリッジは、即席のパーティー会場に早変わりしていた。
「明けましておめでとうーっ！みんな今年もよろしくー！カンパーイ！」
　エアリスはグラスを高々と掲げて乾杯の音頭を取った。
「おめでとう。新年を迎えると、なんだか清々しい気分になるよな。」
　クラウドは隣のティファとグラスを合わせた。
「去年のいいことも悪いこともすべてリセットして、新しい毎日へ踏み出す最初の日だものね。」
　ティファは向かい側のパレットとグラスを合わせた。
「ホント、去年はいろいろあったよなあ。かめ道楽の地鳥産地偽装事件とか、パーラー・コスタ・デル・ソルの賞味期限改竄事件とか。」
　パレットはグラスを持てないレッドXIIIの後頭部に、軽くグラスを当てた。
「去年一年を振り返るにしては、ずいぶんとローカルな振り返り方だねえ。」
　やはりグラスで乾杯出来ないレッドXIIIは、鼻頭でユフィのグラスと乾杯した。
「ミッドガル・タイムズに載ってたんだけどさ、去年を表す単語一語に選ばれた言葉って、『フェイク』だったらしいよー。」
　欲張りにも二つのグラスを持ったユフィは、ヴィンセントのグラスにそれぞれを続けて合わせた。
「フェイク『偽者』、か。なるほどな。言われてみれば我々も、セフィロス・コピーに翻弄されたな。」
　ヴィンセントはすでに二杯目のグラスを空にしたシドに、三杯目を渡してそれにグラスを合わせた。
「うははっ。おまけにニセソルジャー・クラス１ｓｔなんてのもいたしな〜。イテっ。」
　ほろ酔い加減のシドは、ケット・シーの操るデブモーグリが持つグラスと乾杯したが、同時にユフィに後頭部をはたかれ、レッドXIIIからは後ろ足で蹴られた。
「ちょっ。シドさん、それは禁句やで〜。」
　危うく自分が持つグラスを取り落としそうになったケット・シーは、苦笑いで言った。
「でもそんなの関係ねーっ！てねっ。ティファの言うとおり、今日からは去年までのいいことも悪いことも、すべてリセットなんだよ、クラウド！」
　エアリスはクラウドの曲がった背中をバシンッと叩き、景気よくグラスを合わせた。
「ああ、分かってる。過ぎてしまったことはもう変えられない。それをくよくよ悩むつもりもない。今日から始まる新しい一年は、ただひたすら前だけを向いて歩いて行くつもりだ。」
　背筋をしゃんと伸ばしたクラウドは、力強く言った。
「その調子やで〜、クラウドさん！新年早々、辛気臭いのはあきまへんでっ！」
　ケット・シーはメガホンとグラスを打ち鳴らした。
「そうこなくちゃな！ようし、ここらで新年の抱負でも叫ぶとするか〜！打倒神羅ーーっ！！」
　パレットがグラスを掲げて叫ぶと、次々に仲間達がそのあとに続いた。
「打倒アルテマウェポンーっ！」
「打倒宝条！」
「打倒メテオ！！」
「打倒セフィロス！！！」
「「「「オーーーーーーっ！！！！」」」」


　鬨の声を空高く響かせながら、飛空艇は新年の澄んだ星空を飛んで行く──。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　─ＥＮＤ─

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